カストック(Kastock)をはじめ貸株サービスが金利収入の割にリスクが大き過ぎる理由
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カストック(Kastock)をはじめとした貸株サービスに関する話題です。カストックに関してはまだ歴史が浅いため、利用経験のある方はそれほど多くないかもしれませんが、日本株向けの貸株サービスを利用されたことがある方は、それなりに多いのではないでしょうか?
私を含め、アーリーリタイアを目指しているサラリーマン投資家にとっては、本業以外に如何に多くの収入源を持てるかが、早期リタイアを実現する上で重要な鍵を握ります。株式投資家における収入源の代表格はもちろん配当金ですが、その他貸株による金利収入も貴重な収入源の一つとして挙げられましょう。
そこで今日は、そうした貴重な収入源の1つでもある、米国株版カストックをはじめとした貸株サービスのメリットとデメリットについて改めて考えてみます。貸株サービスについてご存知ない方もいるかと思いますので、まずは基本をおさらいした上で、このサービスの是非に話を進めたいと思います。
貸株サービスのメリット
貸株サービスとは、保有している現物株式を証券会社に貸し出すことで、貸している期間において銘柄毎に設定された金利収入が得られるサービスのことを言います。株式を貸している間でも売却はいつでも可能ですし、貸し出したり止めたり、改めて再開したりする手続きも、多少のタイムラグはあるものの取引画面で比較的簡単に実施することができます。
例えば、長く塩漬け状態で保有している株式がある方などは、それを貸し出すことで僅かでも金利収入につなげることができるため、その意味ではメリットのあるサービスだと言えましょう。配当金や株主優待以外に収入につなげられる手段として、実際に利用されている方も多いのではないでしょうか?
貸株サービスを利用できる証券会社
今のところ、貸株サービスが利用できる証券会社は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、カブドットコム証券の5社のみです。基本的な貸株の仕組みや考え方はどの証券会社でも変わりはなく、私たちにとって分かりやすく違う点と言えば、各社毎に提示する銘柄毎の金利水準が異なるところでしょう。
私も過去、SBI証券と楽天証券それぞれで利用した経験がありますが、ほとんど利便性は変わらなかったため、貸し出そうと考えている銘柄の金利がより高い方で利用するようにしていました。ただ、今週はSBI証券の方が高いが次週は同じといったように、時期によって頻繁に金利が変わり対応しきれないため、最終的にはSBI証券にまとめてしまいました。
米国株版貸株サービス「カストック」とは
これまでは、基本的に日本株式のみが貸株の対象でしたが、昨年よりSBI証券が待望の米国株版貸株サービス、カストックを提供し始めました。カストックで貸し出し可能な米国株は、計1000銘柄以上とかなりの銘柄をカバーしている他、ETFも対象になっているため、保有銘柄を貸すことができないといったような問題はまず起こらないでしょう。
現状で言えば、私のポートフォリオは全て米国株で構成されており、配当再投資を軸としたバイアンドホールドを基本としているため、本来であればカストックはまさに私のような投資家にピッタリのサービスであるはずですが、敢えて利用することなく現在に至っています。
貸株金利の水準
金利水準は証券会社や銘柄によって異なりますが、日本株式で言えば0.1%から10%程度までとかなり幅があるものの、構成としては0.5%以下の金利水準を採用する銘柄群が最も多くなっている状況です。一方、米国株版カストックの場合は、私が保有しているような大型株などは大半が0.01%程度と低く、全体的にも日本株に比べると見劣りする金利水準です。
確かに、金利水準だけ見るとかなり物足りない印象ですが、塵も積もれば山となりますし、米国株式は別として日本株式のケースであれば定期預金より軒並み高い水準にあるため、金利収入だけで考えれば銀行に預けておくよりも貸株サービスを利用した方がお得だと言えましょう。
貸株サービスのデメリット
金利収入が得られるだけであれば問題はないのですが、当然ながらそんなうまい話がある訳はなくデメリットも複数存在しています。私に関して言えば、まさにこのデメリットをどうしても許容することができないため、カストックを利用していませんし今後も利用することはないでしょう。
①配当所得ではなく雑所得に変わり二重課税になる可能性がある
貸株に伴う金利収入はもちろんですが、貸株中に支払われる配当金に関しても、特定口座で自動的に税金が徴収される通常の配当所得ではなく、配当金相当額になることがあります。配当金相当額とは、配当金から源泉徴収額を除いた想定額ですが、注意すべきは配当金ではなくその名の通り本来株主に支払われるであろう相当額を計算して払うもので、配当所得ではなく雑所得になるという点です。
したがって、配当金相当額を受け取った時点では税金の支払いが完了していないため、二重課税、つまり配当金から源泉徴収相当額が引かれた上に、さらに雑所得として課税されるという状況が発生してしまいます。しかも、損益通算もできないほか、米国株の外国税についても外国税額控除が利用できなくなってしまうというように、余分に税金がかかるだけでなく節税手段にも不具合が出てしまうため、金利収入以上の損失になる可能性があると言えます。
②証券会社が破綻して株式資産を失うリスクがある
実は私が一番のデメリットだと思っている部分ですが、貸し出している途中で万一証券会社が破綻した場合、貸している株式も損害を被る可能性、場合によっては全てを失ってしまうケースもあり得るということを踏まえておく必要があります。
通常現物と呼ばれる株式は購入者本人の名義になっているほか、証券会社は自社の資産とは分別して管理する義務があるので、仮に証券会社が破綻しても株式資産には何の影響もありません。しかし貸株の場合、貸している間は株の名義が証券会社に移っており証券会社の資産として見なされるため、破綻すれば債権者への補填として売却されてしまうリスクがあるためです。
確かに、証券会社がそんなに簡単に倒産するはずもなく、仮に経営が危うい状況になった場合にはそのタイミングで貸株を中止すれば良い、という考え方もあるでしょう。ただ、少し古い話になりますが、1998年に倒産した山一証券を思い出してください。当時大手の一角を占めていた山一証券が、あのようにいとも簡単に倒産してしまう可能性を想定していた人がいたでしょうか?
恐らく山一証券の社員や取引先でさえも、場合によっては国の救済又は買収の可能性があるとは思っていたかもしれませんが、倒産するとは微塵も考えていなかったはずです。山一証券は、損失を隠蔽する形の粉飾決算をしていたため、経営の危険性が公になりづらかった事情がありますが、貸株サービスを提供しているSBI証券や楽天証券などが損失隠しをしていない保証もありません。
また、百歩譲って倒産報道とほぼ同時に私たちが情報を知ることができたとしたら、実際にどこまでリスクを回避できるでしょうか?あくまでも私の個人的な見解ですが、その段階では既に具体的な回避行動が難しくなっているような気がしてなりません。なぜなら、発表された段階で貸株を解除しようと思っても、同じような投資家が殺到することでウェブサイトがダウンし、解除できなくなる可能性が高いためです。
まとめ
確かに、ただ放置している塩漬け株を貸し出すだけで得られる不労所得でもあり、配当再投資ではありませんがそこで得られる金利収入を再投資することで、長期的に考えればそれなりの資産形成にもつなげられるため、そういった側面だけを見ればカストックなどの貸株サービスは非常に魅力的なサービスだと言えましょう。
しかしながら、金利収入レベルに見合わないほどの利用に伴うデメリット、つまり税金面での不具合や、何より大切な株式資産を失うリスクがあるため、私自身は今も利用していませんし今後も利用しないつもりです。目先の僅かな金利収入のために、これまで苦労して積み上げた株式資産を失ってしまっては何の意味もありません。
現在既にカストックなどの貸株サービスを利用している方や、今後新たに利用を検討されている方は、改めてこの機会に貸株サービスにおけるメリットとデメリットを踏まえるだけでなく、是非とも最悪のケースを想定した上で、貸株サービスの利用可否をご判断いただくことをお勧めします。