自社株買いの実績を発行済株式数推移で確認すべき本当の理由

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自社株買いの実績把握の重要性とその具体的な方法に関する話題です。

 

米国株(アメリカ株)への長期投資を実践する投資家が最も重視する要素としてはは配当金が挙げられますが、実はそれと同じかそれ以上に重要な株主還元の形が自社株買いです。

 

伝説の投資家ウォーレン・バフェットも配当よりも自社株買いを重視していることで有名ですが、皆さんは投資する銘柄を選ぶ際どの程度考慮しているでしょうか?

 

自社株買いは配当金と同じく直接的なリターンにつながる非常に重要な要素だと言えますが、ブログなどを見ている限り、銘柄選びの基準として、自社株買いに積極的な企業か否かという点に注目する方は意外に少ないような気がします。

 

なぜ自社株買いについてはあまり注目されないのでしょうか?あくまでも推測ですが、おそらく実際には注目したいものの、今一つ実態が把握できないために注目しようにも注目することができない、という方が多いのではないかと思いますがいかがでしょうか?

 

つまり、配当金ほどいろいろな情報源を通じてデータが配信されている訳ではなく、英語力の限界から銘柄毎の決算資料を読み込むことも難しいため、自社株買いに関する情報が不足し、参考にしたくても参考にできないという状態です。

 

そこで今日は、改めて自社株買いのメリットおよびデメリットについて簡単におさらいした上で、自社株買いの状況を把握する方法、さらにはその重要性についてご紹介してみようと思います。

 

自社株買いのメリットとは

 

自社株買いとは、株式市場から過去に発行した株式を自らの資金を使って直接買い戻すことを指し、主に企業が株主への利益還元を目的として行うものだと言えます。

 

自社株買いを行った場合には、利益はそのままで発行済株式数だけが減少するため、当然ながら一株当たりの利益(EPS)が増え、結果的には増配同様一株当たりの配当金の増加につながるという効果が生まれます。

 

ただし、同じ効果が得られるもの同士ではあるものの、増配と異なり、自社株買いの場合は一旦消却してしまえば基本的に株主価値の向上効果が半永久的に続くという点は、自社株買いならではのメリットです。

 

その他、基本的に自社株買いは市場にとっての買い材料になるため、発表に伴い株価が上昇するというアナウンスメント効果を享受できる点も、自社株買いのメリットだと言えましょう。

 

実行性というデメリットの存在

 

一方で、自社株買いには配当金にはない株主にとって致命的且つ重大なデメリットが存在します。

 

一つには冒頭で書いた通り、私のような英語が堪能でない投資家にとっては、決算時に発表された自社株買が計画通り進んでいるか否か情報を入手しづらいため、予実管理が難しいというデメリットです。

 

そしてもう一つは、配当が決まったタイミングと発表された利回りできちんと実行されるのに対して、自社株買いは状況に応じて予定が変更されたり中止されたりするため、計画に対する信頼性に欠けるという点でしょう。

 

当たり前ですが、実行されさえすればメリットにも書いた通り非常に効果的な株主還元方法だと言えますが、そもそも実行されなければ我々にとっては全くもって何の意味もありません。

 

これに関して、米国株投資家界隈で人気の高いジェレミー・シーゲル氏も、著書「株式投資の未来」の中で自社株買いに関して次のように語っています。

 

自社株買い戻しは、経営陣の意向しだいで実施される面が強い。たしかに経営陣が買い戻し計画を発表すれば、株価はこれを好材料として上昇する。だが株主はその後、やきもきしながら、計画が実行されるかどうか監視しなければならない。複数の調査結果からみて、自社株買い戻し計画は、中止される可能性がかなり高い。

 

逆に考えると、自社株買いの計画は流動的でどうなるか分からないため、企業側も進捗に関して積極的な情報発信を控えがちになり、故に情報ソースが不足してしまうという状況が発生するのかもしれません。

 

いずれにしても、実際に発表されただけでは信用することができない代物だと言えるため、きちんと実績を確認しなければならないということです。

 

発行済株式数推移から把握が可能

 

上記の通り、自社株買いには流動的な側面があるため、私は銘柄を選ぶ際、配当利回りや連続増配銘柄か否かという点に加え、過去実績を基に自社株買いを実行する企業かどうかを併せて判断するようにしています。

 

確認すると言っても、私も英語が堪能ではなく決算書を隅々まで読み込むことが難しいため、手軽に確認できる米国版モーニングスターのサイトで、直近10年間の銘柄別の発行済株式数推移データを活用しています。

 

参考までに、実際に米国版モーニングスターの銘柄別画面のデータを使ってご紹介すると、赤枠で囲んだ部分が発行済株式数になっており、100万株単位で表記されています。ちなみにグーグルクロームの翻訳機能で日本語化されていますが、オリジナルはもちろん英語です。

 

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自社株買い自体のデータではないものの、ここで確認できる発行済株式数の数字は自社株買いの結果とも言えるため、実績を確認する上では参考に値するデータだと言えましょう。

 

保有銘柄の発行済株式数推移

 

参考までにご紹介すると、私が保有する米国株(アメリカ株)主力6銘柄の発行済株式数の推移は、以下のようになっています。

 

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上記のグラフでは今一つ分かりづらいため、10年前の発行済株式数を100%とした場合の直近年度の割合を、減少率の順に並べると以下の通りです。

 

✔︎ エクソン・モービル 75%

✔︎ プロクター・アンド・ギャンブル 83%

✔︎ ゼネラル・ミルズ 86%

✔︎ アルトリア・グループ 92%

✔︎ コカ・コーラ 94%

✔︎ ジョンソン・エンド・ジョンソン 96%

 

中でも、エクソン・モービルの自社株買いの規模が頭一つ飛び抜けていますが、概ねどの銘柄もコンスタントに自社株買いを行なっている様子が伺えます。総じて伝統的に自社株買いに積極的な姿勢を持つ米国株(アメリカ株)銘柄群だと言えましょう。 

 

最後に

 

自社株買いを実施するか否かは、その企業の方針や置かれている状態によるところが大きいと言えるものの、それ以前に買い戻すための軍資金、つまりフリーキャッシュがなければ、実施したくても実施することはできません。

 

したがって、恒常的に自社株買いができるということは、健全な事業運営とコスト管理を通じてきちんとフリーキャッシュを生み出していることを裏付ける証拠にもなります。

 

また冒頭で書いた通り、自社株買いはEPSの向上につながり、EPSが増加するということは、より一層増配しやすくなるため、結果的には連続増配の実現性をも同時に向上させる施策でもあります。

 

つまり自社株買いを積極的に実践する銘柄は、いろいろな意味で株主に対して長期的に報いてくれる可能性が高いことが予想されるため、自社株買いの実績は銘柄選択に際して参考にすべき重要な要素の一つだと言えましょう。

 

これまで、実態が把握しづらいためにあまり注目して来なかった方は、発表を鵜呑みにせずに発行済株式数の推移で自社株買い実績を確認し、積極的に行っている銘柄を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?