スピンオフ銘柄に対する投資の可能性と課題について考えてみる

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米国株(アメリカ株)においては意外と身近な、スピンオフ銘柄に対する投資に関する話題です。

 

先日、私の保有銘柄の米国ファイザー社が、コンシューマー・ヘルスケア事業の売却もしくはスピンオフを検討している旨のリリースが出たこともあり、この機会に改めてスピンオフについて自分用に調べてみることにしました。

 

そこで今日は、スピンオフ銘柄に対する投資に関して参考になりそうな内容を部分的にご紹介してみようと思いますので、スピンオフの可能性がある銘柄を保有しているホルダーの方、さらにはリターン目的でスピンオフ銘柄への投資を目論んでいる方は是非ご参考ください。

 

スピンオフとは

 

スピンオフとは、事業部門などを独立した企業として分離することを指し、その企業は上場会社として株式市場で取引されます。

 

なおスピンオフした場合、元の親企業の株主に対しては、分離した子企業の株式を持分割合に応じて配当として分配することになるため、親企業の株主は親企業の株式と分離した子企業の株式の両方を保有することになります。

 

親企業の株主にとっての目先のメリットとしては、株主の意向と関係なく事業が他社に売却されてしまうのに対して、スピンオフの場合は株主の意思でその子企業を保有するか否かを判断することができるというメリットが挙げられます。

 

確かにメリットではあるものの、実際にはスピンオフされた企業の株式を保有し続けるべきか否かという部分は、株主にとって判断に迷うところではないかと思いますがいかがでしょうか?

 

有望な投資対象としてスピンオフ株が注目されている

 

私も含め、個人投資家界隈で話題に上ることはほとんどありませんが、実は有望な投資対象としての一面も備えているようです。

 

スピンオフ企業として成功している代表例を挙げるならば、アルトリア・グループから国際部門がスピンオフされたフィリップ・モリスや、アボット・ラボラトリーズからバイオ医薬品や新薬開発部門がスピンオフされたアブビーなどでしょう。

 

上記の例もそうですが、完全に親企業の支援なく独立するスピンアウトとは異なり、スピンオフの場合、多少の差はあれど元々ビジネスが成立している事業部門が経営資源をそのまま引き継ぐ形で分社化するケースが多いため、基盤がある分比較的成功につなげやすい状況にあると言えます。

 

実際、構成銘柄によって変わる可能性は秘めているものの、米国(アメリカ)の上位企業から分離・独立した銘柄で構成されるブルームバーグ スピンオフ指数においても、安定して良好なパフォーマンスを実現しています。

 

独立した会社の企業価値は上昇する傾向にあり、米S&P500種株価指数が2003年から17年4月7日までの間に2.7倍の上昇にとどまるのに対し、親会社から分離した米国の時価総額上位企業で構成されるブルームバーグスピンオフ指数は7倍上昇した。スピンオフは海外では一般的に実施されており、15年7月に米化学メーカー、デュポンから独立したケマーズなどの例がある。(2017年4月11日ブルームバーグニュースより)

 

また、著名投資家のピーター・リンチも著書「株で勝つ」の中で、お薦めする銘柄の条件の一つとして、以下の抜粋の通り、スピンオフされた企業を挙げています。

 

大企業は、独立させた部門が失敗することで評判に傷がつくことを恐れる。だから、分離独立する会社は、通常良好な財務内容を持ち、独立するに十分な備えを持っている。ひとたび独立するや、新しい経営陣によって、コスト削減や新戦略の導入で収益性の向上を図ることができる。(「ピーター・リンチの株で勝つ」より抜粋)

 

今回ファイザーが売却もしくはスピンオフする対象となる事業に関しても、市販の鎮痛薬「アドビル」、リップクリームの「チャップスティック」、ビタミン剤「セントラム」などのブランドを持ち、昨年の売上高が34億ドルと一般用医薬品(大衆薬)では世界最大規模とも言われているため、スピンオフ後の経営努力次第では、投資価値のある銘柄に成長しそうな気がします。

 

スピンオフ銘柄へ集中的に投資可能なETFのご紹介

 

参考までに、上記のような可能性を秘めたスピンオフ銘柄への投資に興味がある方向けに、スピンオフ銘柄を集めたGuggenheim S&P Spin-Off ETF(CSD)という米国ETFを紹介させていただきます。

 

成功しやすい環境にあるとは言え、当然ながらスピンオフ銘柄全てが成功する訳ではなく、リスクも相応に高いと考えられるため、仮にスピンオフ銘柄投資をする場合には、個別銘柄ではなくこういったETFを活用をおすすめします。

 

①ETF概要

 

過去2年間にスピンオフ、株式部分的売却または一部新規株式公開された約40の米国株(アメリカ株)で構成されており、S&Pスピンオフ・トータル・リターン・インデックスの 運用実績に連動する投資成果を目指すETFです。

 

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※morningstarウェブサイトより

 

②組み入れ上位銘柄

 

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※morningstarサイトより

 

③パフォーマンス

 

参考までに、S&P500指数のSPYとの過去5年間の比較チャートは以下の通りですが、組み入れ銘柄によって変わる可能性はあるものの、この5年間においてはSPYを上回る良好なパフォーマンスを実現しています。

 

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※morningstarサイトより

 

スピンオフした個別株の継続保有上の課題

 

以上のように、スピンオフ銘柄への投資は、リターンにつなげられる可能性が高い投資法とも言えるため、仮に保有株がスピンオフした場合は、親銘柄と子銘柄を共に保有し続けるという選択肢もありなのかもしれませんが、その場合にネックになるのが口座に関する課題です。

 

なぜなら、私は基本的にSBI証券の特定口座を米国株(アメリカ株)投資のメイン口座としていますが、仮に保有株がスピンオフを実施した場合、SBI証券に関して言えば、子企業の株式だけでなく親企業の株式も含めて一般口座に振り替えられてしまうからです。

 

お客さまが特定口座で保有されている外国株式で、スピンオフ、買収・合併(株式交換・現金交換等)、ライツイシュー、資本返還、ETFにおけるキャピタルゲインの配分等の権利処理が発生した場合、当該株式残高は一般口座に振替えられます。(SBI証券ウェブサイトより抜粋)

 

念のため、他の証券会社も確認してみましたが、マネックス証券は若干状況が異なるものの、私が併用している楽天証券もSBI証券と同じく一般口座へ振り替えられてしまう形のようです。

 

ご存知のように、一般口座で売買をした場合には、納税に絡む記録や計算も自ら行わなければならず、しかも米国株(アメリカ株)の場合は為替のコンディションも絡んできてしまうため、とにかく面倒の一言に尽きる形になるということです。

 

つまり、確定申告をするつもりがない私の場合は、一般口座で配当をもらいながら放置する覚悟を決めるか、もしくはスピンオフ実行前に一旦売却し、継続保有を希望する銘柄の場合は、スピンオフ後に特定口座で買い戻すかのいずれかを選択することになりましょう。

 

最後に

 

今回報道されたファイザーのスピンオフ検討案件は、事業内容的にも一定の投資価値があるような気がしていますが、上記の通り口座に関する課題、つまり一般口座へ振り替えられてしまうという致命的な問題が発生してしまうため、悩ましいところです。

 

現時点では、ファイザーがスピンオフを決定した場合、おそらくですがスピンオフが実行される前の段階でファイザー株を一旦全て売却し、必要に応じて特定口座で買い戻すという、後者を選択する可能性が高いような気がします。

 

仮に保有株がスピンオフした場合、皆さんならばどのような決断をされますか?