プライベートブランド(PB)は生活必需品セクター銘柄にとってどの程度脅威なのか?

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世界の小売業者が力を入れるプライベートブランド(PB商品)の普及による、代表的な生活必需品ナショナルブランド(NB商品)に対する影響力に関する話題です。自身も投資している主力銘柄群でもあるため、非常に興味深いテーマです。

 

昨今アマゾン・ドットコム(amazon)もプライベートブランドを次々と立ち上げているだけでなく、セクター全体の株価も冴えない状況が続いているため、生活必需品銘柄を保有する投資家の中にも、不安になっている方が多いのではないかと思います。

 

ただ、全ての銘柄ではないものの、少なくともコカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル、ゼネラル・ミルズといった、強力なブランド力を持つ生活必需品銘柄に関して言うならば、今後も引き続き投資価値の高い存在であり続けるような気がします。

 

そこで今日は、これまで長くトップレベルのリターンを実現してきた、シーゲル銘柄とも呼ばれる伝統的な生活必需品銘柄に対するプライベートブランドの影響度、さらには今後に対する期待値について、個人的な見解をご紹介してみようと思います。

 

世界のプライベートブランドの浸透状況

 

まずはじめに、若干古いデータで恐縮ですが、プライベートブランドの国別シェアを再確認してみましょう。以下のグラフを見ると、国によるバラつきはありますが、総じてヨーロッパ勢のシェアが高いことが分かります。先進的なイメージのあるアメリカについては、平均に近い18%と意外に低い状況です。

 

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アメリカのシェアが低い理由には諸説ありますが、一説には広告規制が少ないことでナショナルブランドが比較的強いこと、さらには同グレード、同クオリティの商品を販売する場合には、不当な価格差を設けてはならない、というロビンソン・パットマン法という法律の影響があるようです。

 

こうしてヨーロッパの普及状況を見てしまうと、今後世界的にも同じように浸透が進むのではないかと不安に感じる方も多いのではないかと思いますが、アメリカのように、各国毎に法規制の状況やナショナルブランドの位置づけが異なるため、全てがヨーロッパ化する可能性はかなり低いと言えましょう。

 

小売業におけるプライベートブランド促進の限界

 

何よりも、そもそもプライベートブランドには小売業者にとっても課題、つまり諸刃の剣的な限界点が存在します。そして新興国は別として、おそらく先進国では多かれ少なかれそれに近い状況に到達しているのではないかと、個人的には考えています。実際にアメリカでは既に伸び悩んでいます。

 

小売業は、構造上薄利が避けられない業種でもあるため、利益率を確保することができるプライベートブランド販売は、小売業者にとっては非常に美味しい商売だと言えるため、各社がプライベートブランド販売に参入するのも無理はありません。

 

しかしながら実際には、店頭におけるプライベートブランドシェアを高め過ぎると、来店する顧客にとっての店舗の魅力でもある品揃えに対する評価が損なわれ、顧客離れを起こし、店舗としての競争力が失われてしまう状況を招いてしまうリスクが潜んでいます。

 

皆さんも考えてみて下さい。あらゆるカテゴリーの商品がプライベートブランドで埋めつくされ、広告などで話題のナショナルブランドをほとんど置いていない店舗に敢えて買い物に行きたいと思いますか?おそらく大半の方は思わないでしょう。

 

確かに、いずれかのカテゴリーではプライベートブランドを買う顧客も多いのかもしれません。ただ、全てのカテゴリーの商品をプライベートブランドで揃えたいと考える顧客は少ないほか、定期的に違うブランドを試してみたくなったり、値段よりも品質重視の顧客も一定以上存在するため、やはりナショナルブランド中心の棚割にせざるを得ない状況にあると言えます。

 

また、広告を展開しているナショナルブランドをネタに顧客を店舗に呼び寄せることにより、結果的にはプライベートブランドの売上も同時に伸ばすことができるため、マーケティング的にもナショナルブランドとの共存を前提とした最適化がメインテーマになっています。

 

カテゴリーリーダーでもある強力ブランドの優位性

 

一方で、全てのナショナルブランドがプライベートブランドと共存するこができる訳でもない点には注意が必要です。つまり、店頭でプライベートブランドに取って代わられてしまうナショナルブランドも現実的には存在し、それらのブランドに関しては淘汰されてしまう可能性はあるということです。

 

一般的にこの手の話題では、プライベートブランドとナショナルブランドを一括りで議論されることが多いですが、実際にはナショナルブランドの中でも、所謂各カテゴリーを代表するカテゴリーリーダーか否かによってもその影響度は違ってくるようです。

 

少し古いデータですが、アメリカの調査機関でもあるニールセンがそのレポートの中で、小売業者がナショナルブランドに代えてプライベートブランドを置く際、カテゴリーリーダーと置き換えるケースは少なく、大抵の場合にそのターゲットになるのは下位メーカーであると語られています。

 

売上が伸び悩むナショナルブランドを利益率の高いプライベートブランドに置 き換えるという決断が下されるとき、たいてい犠牲になるのは中小ブランドです。プライベートブランドの成長がカテゴリーリーダーの立場を脅かすことはまれで、その脅威を最も強く感じることになるのは市場で2番目、3番目のブラ ンドです。(中略)米国では市場浸透率が高い、購入頻度が高い、あるいは強力なニッチブランドを商品構成から外してしまうと、競合店へ の顧客流出につながりかねません。(ニールセン「世界のプライベートブランド市場動向」レポートより抜粋引用)

 

つまり、コカ・コーラやプロクター・アンド・ギャンブル、ゼネラル・ミルズなど、広告も積極的に行いながら、長い間愛され続けられているカテゴリーを代表するようなブランドを持つ銘柄に限って言うならば、少なくとも店頭においては、プライベートブランドに入れ替えられてしまう可能性は低いと言えそうです。

 

絶え間ない経営努力による環境変化への適応

 

続いてナショナルブランド側の打ち手についても考えてみます。当然ながらナショナルブランド陣も、プライベートブランドの攻勢を単に手をこまねいて見ているだけかと言えばもちろんそんなことはなく、そういった状況を打開すべく様々な経営努力により順応します。

 

代表的なプライベートブランドの影響、利益率の低下を例に考えてみましょう。利益率が低下する要因としては、ナショナルブランドよりも低い価格設定で販売されることが多いプライベートブランドに合わせる形で、ナショナルブランドも価格を下げざるを得ない状況に陥ってしまうというものです。

 

仮にそういう状況に陥ったとしても、ナショナルブランドは利益率を確保できる形への転換を模索することでしょう。例えば、代表的な策で言えばコストダウンが挙げられます。名だたる生活必需品銘柄が常にコストダウンに力を入れているのは、多かれ少なかれこういった状況が背景にあるのかもしれません。

 

他にも、数多くのブランドを抱える生活必需品銘柄群であれば、ブランドの見直しなども有効でしょう。例えばプロクター・アンド・ギャンブルも、ここ数年でも大幅な見直しを行っており、今後も常に行い続けるはずです。つまり、利益率の低いブランドを売却したり、有望なブランドを買収することで、全体として利益率向上を図ろうとする動きです。

 

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参考までにご紹介すると、以下は比較的プライベートブランドに侵食されやすいカテゴリーでもある、日用品、食品、飲料カテゴリーを代表する6銘柄の直近10年間の営業利益率の推移ですが、ご覧の通り、多少の波はあるものの現にいずれも高い水準を維持できていることが分かります。

  

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最近特にプライベートブランドが取り沙汰されますが、ご存知の通りそれ自体今に始まったものではありません。上記の銘柄群が、現時点でもこれほどの利益率を確保できているということは、今後も経営努力により十分カバーできる範囲内の影響でしかない可能性が高いとも言えましょう。

 

まとめ

 

以上、様々な観点から、ナショナルブランド、さらにはその代表とも言える、高いブランド力を持つ生活必需品銘柄に対する、プライベートブランドの影響有無や程度を考える上でのヒントになりそうな情報をご紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

もちろん世の中に絶対ということはないため確実なことは言えませんが、少なくとも強いブランド力を持つ生活必需品銘柄群に関して言えば、対抗策の打ち手が豊富であることから考えても、プライベートブランドの影響は限定的であり、今後も引き続き高いリターンをもたらし続けてくれるような気がします。

 

また、アマゾン(amazon)の脅威が取り沙汰されたことで、食品をはじめとした生活必需品セクター全体に対する市場の期待値が下がっている状況にありますが、結果的には恐れていたほどの影響がなく、今後も引き続き安定した利益を確保できる可能性が高いことを考えると、逆に今はこの上ない投資のチャンスとも言えます。

 

もし仮に、プライベートブランドの攻勢を懸念して、過去におけるトップパフォーマーでもある生活必需品セクターのシーゲル銘柄群に対する投資を躊躇している方は、改めてその影響についてご自身でも調べた上で、投資価値の有無についてご判断いただければと思います。

 

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