CSRを長期投資における銘柄選びの基準にすべき理由とは

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長期投資銘柄におけるCSRの重要性に関する話題です。CSRというと社会貢献や慈善活動のことを指す言葉のようなイメージを持たれることが多いですが、本来の意味は企業の社会的責任という意味の言葉であり、株式への長期投資にあたっては重要な意味を持っています。

 

実はこの度、以下のニュースにある一連の問題を機に、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)を売却することにしました。極端に言えば、これは私がジョンソン・エンド・ジョンソンに対し、CSRの観点において適切でないという評価を下した証とも言えます。

 

ロイターが入手した文書によると、同社は1970年代から原料滑石(タルク)の試験でアスベストが見つかったことを米食品医薬品局(FDA)に報告せず。タルク問題の記述は57─58年時点までさかのぼる。

同社はまたベビーパウダーの研究を同社の費用負担で委託した上、「ゴーストライター」を雇ってその研究論文を書き直させ学会誌で発表したという。

同社のベビーパウダーと健康被害の因果関係を巡っては、これまでも訴訟が相次いでいる。

今年7月には、ベビーパウダーの原料に含まれるアスベストが原因で卵巣がんを発症したとして女性22人が訴えていた問題で、ミズーリ州セントルイス巡回裁判所の陪審が同社に46億9000万ドルの損害賠償支払いを命じる評決を下している。同社はこの種の係争を1万件以上抱えている。(ロイターニュースより抜粋引用)

 

 

それでは、なぜ私がそう判断したのか、つまり長期投資を行う銘柄においてCSRがどのように関係し、なぜCSRに対する意識の高い銘柄である必要があるのか、というテーマについて、個人的に思うところを簡単にご紹介してみようと思いますので、これまであまり意識されて来なかった長期投資家の方は、この機会にご参考ください。

 

CSRとは

 

まずは、改めてCSRに関するおさらいです。冒頭でも少し触れましたが、一般的にCSRというと、何らか社会貢献活動のことを表す言葉として使われることが多いですが、以下にご紹介する通り、正式には広い意味における企業の社会的責任という意味を持つ言葉です。

 

CSRは企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をする責任を指す。(ウィキペディアより抜粋引用)

 

 

つまり、確かに慈善活動など社会貢献活動などもCSRの一部であることに違いありませんが、どちらかというとむしろ普段の営みでもある本業を通じて果たすべき社会的責任のことを指す言葉です。いずれにしても、一部の企業だけにとどまらず、社会に存続し続ける上では全ての企業にとって必要不可欠な概念だと言えましょう。

 

長期投資先(銘柄)におけるCSRの重要性

 

それでは早速、長期投資銘柄におけるCSRの重要性に話を進めます。基本的に私は銘柄選定にあたり、あくまでも見聞きできる範囲内でしかありませんが、高いレベルでCSRを果たすことができる銘柄か否か、という点を重視するようにしています。

 

なぜなら、長期投資を志す私にとっては、保有銘柄には先々まで長く存続してもらい、かつ高水準な利益を稼ぎ続け、配当金を株主である私に払い続けてもらうためにも、CSRは必要不可欠な要素の中の1つだと考えているからです。

 

つまり、株主や消費者はもちろん、国や行政なども含めた企業を取り巻く全ての利害関係者から評価され、受け入れられ続けなければ、配当どころか存続さえも叶わなくなる可能性が高いということです。短期的な株価や利益を求めるだけであれば必要はありませんが、永続するためには間違いなく必要でしょう。

 

例えば冒頭でも触れた通り、今回のジョンソン・エンド・ジョンソンの売却についても、少なからずCSRレベルに対する信頼が揺らいだための売却だと言っても過言ではありません。世界を代表する優良企業でもあるため信頼していたにも関わらず、毅然とした誠実な対応がないことに対して、正直残念な気持ちになりました。

 

もちろん、アスベストの混入が事実かどうかは分かりません。ただ、事実はどうであれ、含まれていた場合の深刻な影響を考えれば、改めてリコールなりで徹底的な再調査と納得のいく説明を自ら率先して行うことが、企業としての社会的責任を果たすということであるにも関わらず、否定する声明を出すのみでその気配もありません。

 

ベビーパウダーの売上の構成比が大きい訳ではありませんし、1万件以上の訴訟を抱えていたとしても、業績的にはそれほど大きなダメージにはならない可能性も高いため、このまま投資を続けてもリターンが得られる銘柄なのかもしれませんが、要するに私の懸念はそこではなかったということです。

 

迅速なリコールに見るゼネラル・ミルズのCSRレベル

 

私は、米国加工食品大手のゼネラル・ミルズ(GIS)も10%程保有しています。ご存知の通りゼネラル・ミルズの株価は長く低迷を続けており、現に私自身も25%以上の含み損を抱えている散々たる状況です。確かに株価的には全く冴えませんが、今のところ私はこの銘柄から手を引こうとは考えていません。

 

そしてそれには、ゼネラル・ミルズのCSRレベルに対する高い評価が少なからず影響しています。現在のところ業績的にも冴えませんが、それはここ数年の外的環境の変化に事業を適応させる途中段階、つまり過渡期にいるだけであり、CSRレベルさえ揺らがなければ、長く存続し続けられる銘柄だと考えているからです。

 

ちなみに以下は、2016年に発生したゼネラル・ミルズの小麦粉リコールに関する当時のニュース記事ですが、自社製品から大腸菌が発見されていないにも関わらず、ゼネラル・ミルズはすみやかに4500トンもの大規模なリコールならびに調査を行なう決断をしました。かなり対応は早かったと記憶しています。

 

米食品大手ゼネラル・ミルズ<GIS>は5月31日、昨年末から米国内20州で発生した大腸菌O121感染と関連している可能性があるとして、全米で販売した約1000万ポンド(約4500トン)の自社製小麦粉のリコール(回収)に着手したことを明らかにした。

リコールを決めたのは、「ゴールド・メダル」や「シグニチャー・キッチンズ」など6種類の小麦粉で、これまでにスーパー大手のセーフウエイやアルバートソンズなどを通じて販売されていた。ゼネラル・ミルズは、販売された小麦粉から大腸菌は検出されていないが、慎重を期してリコールを決めたと説明した。(モーニングスター社ニュースより抜粋引用)

 

 

確かに、リコールなどの対応には少なくないコストも発生し、業績や株価にも大きく影響してしまう可能性もあるため、容易に決断できることではないことは確かです。ただ、消費者に対する被害を最小限にとどめるためには必要なことですし、決断しづらいからこそ、CSRレベルが試される場面だと言えましょう。

 

つまり、薄っぺらな社会貢献活動の類ではなく、こうした難しい決断をあのスピード感で実行できるゼネラル・ミルズであれば、いかなる状況においても高いレベルで社会的責任を果たすことができ、永く様々なステークホルダーからの信頼を得続けられるように思いますが、いかがでしょうか?

 

最後に

 

以上、長期投資の銘柄選びにおけるCSR観点の重要性について、個人的な考えをご紹介してみました。銘柄選びは結婚相手選びに例えられることがありますが、まさにそれに近い考え方であり、企業の信頼の源であるCSRレベルが高い、つまり信頼できる相手でなければ長く付き合い続けることができないということです。

 

銘柄選びにあたっては、当然ながら業績や過去のリターン実績など目に見える要素はもちろん重要です。ただし、それはあくまでも過去と現在の状態でしかなく、遠い将来まで繁栄し続けられる銘柄か否かを予測する上では、目に見えるコンディションだけでなく、将来の存続可能性を表すであろう、CSRという要素も重要な意味を持つはずです。

 

もちろん銘柄は、CSRという要素だけで選ぶべきものではありませんが、万一これまでCSR観点をほとんど加味していなかった長期投資家の方は、一生の伴侶になり得る銘柄を選ぶためにも、私ほど神経質にならないまでも、検討材料の主要な1つにCSR観点を加えてみてはいかがでしょうか?

 

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